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プレスリリース

臨床研究におけるミスコンダクトについて

2013年11月21日

「医学研究の対象となる患者を含め、患者の健康を増進し保護することは医師の義務である。医師の知識と良心はこの義務の達成に捧げられる。」
−ヘルシンキ宣言, 2013

研究におけるミスコンダクト(不正行為)は医学領域だけでなくその他のサイエンスの領域でもしばしば問題になる。しかし、臨床研究・臨床試験の場合は、患者さんを含む被験者の参加の上に成り立っており、ミスコンダクトがもたらす社会的影響は深刻である。臨床研究・臨床試験の成果は、医療現場の判断や患者さんの治療選択を左右するエビデンスとなる。そのエビデンスが、もし有効性が過大に評価され、リスクが過小に評価されるよう捏造、改ざんされたものだとしたら、その行為は被験者となった患者さんを裏切るばかりでなく、無数の患者さんの健康を損なう可能性のある反社会的な行為と言わざるを得ない。臨床試験に参加して下さる患者さんの貴重なご意思の背景にある医学の発展への希望、期待、献身的行為に対して、裏切ることは許されない。

現在、我が国の臨床研究・臨床試験の信頼は国内のみならず国際的にもおおきく揺らいでいる。臨床研究・臨床試験への信頼回復のための真相究明と、再発防止のための方向性を国内外に発信することが必要である。また、国内の研究者間レベルの信頼だけではなく、患者さんを含めた社会全体からの信頼が危機に瀕している。臨床研究・臨床試験の推進は、患者さんの協力無くしてはありえない。一方、患者さんからの信頼を失うことは、臨床研究・臨床試験の衰退につながり、さらには医療の発展を停滞させてしまうことになりかねない。患者さんにより良い医療を届けるためには、臨床研究・臨床試験によるエビデンス構築は不可欠である。

日本臨床薬理学会は、良質な臨床研究・臨床試験の推進とそのための基盤整備を重要な活動の一つとして取り組んできている。昨今の研究不正が報道される事態となっていることに対して、深い憂慮の念を表明せざるをえない。一方で、一部の研究不正により、健全な産学連携研究活動までもが萎縮し、多くの研究活動に支障が生じることも懸念される。繰り返しになるが、臨床研究・臨床試験の停滞は、決して社会が望むことではない。患者さんにより良い医療を届けるためには、臨床研究・臨床試験によるエビデンスの構築が不可欠であることを決して忘れてはならない。臨床研究・臨床試験の推進は、これからも本学会の重要な活動の一つであり、不正行為の再発を予防し、社会から信頼される良質な臨床研究・臨床試験の実施体制を整備するため、本学会としても一層の取り組みを押し進めてゆく。

冒頭にヘルシンキ宣言を抜粋して記したが、臨床研究・臨床試験に携わるもの全てが、再度この宣言の精神に立ち返り、行動することが求められている。

一般社団法人日本臨床薬理学会
理事長 大橋京一

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