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新薬開発と臨床試験はなぜ必要なの?

 私たちが用いている薬はどのようにして作られたのでしょうか。先ず何百、何千という薬の候補物質を研究室で化学合成したり、自然界から抽出します。

 これらを試験管の実験でスクリーニングにかけて、効果のある物質を選び、次に動物に投与して効果と副作用を調べます。動物実験で効果と安全性が確認されても、この薬の候補がヒトでも有効で安全かどうかは分かりません。そこで、ヒトを対象に効果と安全性を調べます。これを臨床試験と言います。特に、薬の販売承認を得るために行う臨床試験を治験と言います。

 治験は第I相試験から第III相試験の3段階あります。第I相試験では、元気な男性の若者が被験者になります。ここでは、薬がどのように吸収されて体の中に広がり、体から出て行くかを調べます。

 第I相試験で薬の体内の動きと安全性が確認されると、次は少数の患者さんを対象に薬をどのくらい服用したらよいかを調べます。これを第II相試験と言います。

 次に、多くの患者さんを対象に従来から使われている、似た作用の薬と効果と安全性を比較する試験をします。これを第III相試験と言います。この第III相試験で薬の候補の効き目と安全性が確認され、国が承認すると販売されることになります。

 この薬の候補を作り出すところから治験までを「創薬」と言います。

 治験では薬の候補を服用するのは千人位ですので、まれな副作用は治験では分かりません。そこで、発売後にも数千人を対象に服用時の副作用の有無を調査して、安全性を確認します。

 また、慢性疾患の治療薬では薬に効き目があると言うことだけでは不十分な場合があります。例えば、コレステロールを下げる薬を服用する目的は、コレステロールを下げることによって動脈硬化性疾患(脳梗塞や心筋梗塞など)を防ぐことです。そこで、発売後、コレステロールを下げる薬を服用すると、動脈硬化性疾患が服用していないヒトよりも少ないことを確認する臨床試験を行うことがあります。

 近年、根拠に基づいた医療(evidence-based medicine, EBM)が強調されていますが、この根拠を作るためには発売後にも臨床試験が必要です。これらの発売後の調査と臨床試験は「育薬」と呼ばれます。薬の確かな効き目と副作用の確認のためには「創薬」と「育薬」の両方が必要なのです。

(景山茂)